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2024-04-01 12:00:00

こんにちは。
くらしのまなび舎の五味です。

今朝は桜雨。寝ぼけ意識の向こうに聞こえてくる雨音にエッ?てなった朝でした。
まだつぼみばかりの桜にとっては恵みの雨ですね。水分をたくさん摂って、ぷんぷくりんに大きくなったつぼみが増えました。
今年は、例年になく見ごたえのある大きな花が咲きそうです...

少し前に、とある知的障害特別支援学校で行われた「エージェンシーの発揮」をテーマにした研究会に参加してきました。OECDが提言した2030年に向けたラーニングコンパスの中に出てくる「生徒エージェンシー」というものを、どのように開発し、生徒が発揮できるようにしていくか、ということについての実践研究会でした。
エージェンシーという言葉自体は、一般的には「代理」という意味でつかわれることが多いかと思います。(代理人事務所の会社名に使われていたりしますよね。)なので個人的には「教育業界でエージェンシー?...代理?...なに???」と思ったのですが、英和辞典をひも解くとエージェンシーには「行為主体性」という哲学的な概念もあるとのことで、そこを出発点にさらに読み解いていくとなるほど...と見えてくるものがありました。

OECDの提言では、エージェンシーとは「生徒が自分の人生や周りの世界に対してポジティブな影響を与えうる能力と意志をもっている」という原則にもとづいていて、その上で「生徒エージェンシー」とは、「変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力」として定義されています。個人や社会のウェルビーイングの実現を目指し、私たちの望む未来に向けた方向性、複雑で不確かな世界を歩んでいくために欠かせない力の一つとしています。
非常に大きな概念的な話ですが、その研究会では、自分自身のあり方と目標との関係性のつくり方(つくらせ方)、目標設定のあり方・やり方、目標を達成するための方法のひきだし方、目標達成の確認の仕方など具体的なエージェンシーを発揮するための方策や、こうした活動を繰り返すことで一人ひとりの行為主体性を育んでいる、といったことを紹介していました。

この研究会で登場するお子さんたちはみんなハツラツとしていて、充実しているさまがにじみ出ていました。しっかりと自分の人生を支えてくれる大人たちに囲まれ...というか、お子さんたち自身が自分の人生を支えてくれている人に囲まれている実感をもっている様子が伝わってきました。(自分自身を振り返り、同じ年齢時分に同じことを感じていただろうかと思うと...汗)
その昔「人は人からしか学べない」という言葉を耳にし、事あるごとに振り返り、やはりそうだよな、と思うことがしばしばあるのですが、いずれも自分の中に他者という存在があるかないかということが、この難しい世の中をしなやかに生きていくためのに必要な自身の成長だったり、それから得られる充実感であったりになるんだなぁと、強く印象に残りました。

そこから、自分たちのこの4年間を振り返ると...

Oleaでは、私たちはお子さんたち一人ひとりとじっくり向き合い、表面的な作法や技術だけにフォーカスするのではなく、その裏にある、なぜ必要なのか、どうしてやった方がいいのか、といった本質的な部分に迫りながら、お子さんと一緒に様々な状況や場面に触れ、チャレンジしてきました。それにより、身の回りのことや他の人とのかかわり、家庭や出先での立ち振る舞いなどなど、お子さん一人ひとりが、こうしたらいいんじゃないか、あぁしたら良さそうだからやってみよう、と自ら考えながら乗り越えていくことが増え、ありふれた環境の中に流れる「くらし」というものに自然に乗れるようになってきているように思います。
こうなると、さらにくらしの場面が広がり、あそこに行ってみて●●をやってみよう、今度はこっちに行ってみて××をやってみよう、とお子さん本人も私たちもご家族もみんないい意味での欲が出てきます。そこでもまた、お子さん一人ひとりがそれまでに培った経験やノウハウをフル活用して、考えながら新しい状況や場面を乗り越えていく...そして、今度はもっとあれをやってみよう、これをやってみよう、それもできそうだね...と、お子さんたち自身が自分のくらしが広がることを望み、その広がりを獲得するようになっていっているように感じています。

とはいえ、その過程は一筋縄ではいかないことがたくさんあります。試行錯誤しながら、気持ちをコントロールしながら、できたできないを繰り返し、良い思いも悪い思いも感じながら、広がりをつくっていく...これって本当に苦行だなぁと思うこともしばしばあります。そんなことがあっても、Oleaに来たいと言う原動力ってなんだろうな...とこれまで良く考えたりしていました。
しかし、エージェンシーについて学ばせてもらった今は、お子さんたちにとって、Oleaは自分のエージェンシーを発揮できる場である...これが答えだったらいいなぁ、と。
私たち自身、Oleaでエージェンシーを発揮すべく試行錯誤する日々ですが、お子さんたちもそんなふうに思ってくれたらうれしいなぁと思う、5回目の春です。

長くなりましたが、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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